第52章

「私が自分で誘拐を自作自演して、車にダミー基地局と注射器を仕込み、警察に立件させたのは、あなたに同情してもらうためだとでも? ずいぶんと自意識過剰なのね」

電話の向こうで、息を呑む気配がした。

「今夜お前が尾行されたのは自作自演だという、匿名のタレコミがあったんだ」

葵は軽く笑った。その笑みに温度はない。

「匿名のメッセージを鵜呑みにするなんて。あなたの周囲がザルみたいに情報漏れしているのも納得だわ」

和也の怒りが、その言葉に一瞬削がれた。

「どういう意味だ?」

葵は、輸血チューブをゆっくりと滴り落ちる血液を見つめた。

「あなたのAI研究所は、義貴から渡された資料を受け取って...

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